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終了第6弾企画

国境の島々のダイナミズム

2021.02.16

 10月7日に人社系協働研究・教育コモンズの第6回シンポジウム「国境の島々のダイナミズム」を開催いたします。皆さまご参加いただきますよう、お願いいたします。


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 日本は古来より九州・沖縄の島々を通じてアジアとの交流を進めてきました。戦後の国境線の画定によりこうした交流は停滞したものの、21世紀に入るとアジア諸国の経済成長に伴い、隣国から直接これらの島々を訪れる人が急増しました。また、国連海洋法条約の成立や中国の海洋進出に伴い、海洋政策の「拠点」としての国境の島々に対する関心も高まっています。他方で、2019年の「ボイコット・ジャパン」運動により対馬を訪れる韓国人が激減したり、今年に入って新型コロナウイルスの流行によりインバウンド客が激減するなど、国際情勢の変化は国境の島々に様々な影響を及ぼしています。

 このような国境の島々が有するダイナミズムをどのように捉えるのか。本シンポジウムでは、国境の島々が抱える問題点や将来的な可能性について、人文社会系の多角的な視点から考えていきます。それぞれの島の有する歴史的・文化的な背景も踏まえつつ、現在そして未来社会の「島」の在り方を議論します。

▶ 日時:2020年 10月 7日(水) 13:00~17:00

▶ 講演者: アイコンをクリックで詳細が見られます)

●「国境の島々のダイナミズム」

高木彰彦氏(九州大学 名誉教授)

●「境界地域としての中世対馬」

松尾大輝氏(九州大学人文科学府 歴史空間論専攻 日本史学専修 博士後期課程)

中世対馬は、「境界」「海域世界」「辺境」と表現されることが多い。これらは、日朝両属性、国家支配からの隔絶性、日本の領域下、という一見矛盾する性格を示している。本報告では、この三つのキーワードが何を対象として導き出されるのかを明らかにした上で、これらの性格が両立しうるのか、対馬の政治的・経済的立場に如何に作用したのか考察したい。これにより、現代に劣らない、或いはそれ以上の「ダイナミズム」を有した中世の国境の島々の具体像を提示することを目的とする。同時に、現代の対馬と比較し、何が失われたのか、何が共通点として挙げられるのか検討する。以上を踏まえ、国境島嶼部が抱える問題や将来的な可能性を、歴史的観点から考えてみたい。

●「仏教文物からみた対馬の境界」

大澤信氏(九州国立博物館 研究員)

 対馬は、朝鮮半島と日本列島の間に位置する地理的特性から、数多くの渡来文物が現存している。現在、中国や朝鮮半島より伝わった渡来仏は約130軀にのぼり、近世以前の仏像に限れば全体の6-7割を占める。報告者は2015年から2018年までの約3年間、対馬市役所博物館建設推進室に勤務し、対馬で生活するなかで次の2点について疑問を抱くようになった。第一に、対馬の東西でなぜ仏像の種類が異なるのか、第二に、対馬の人びとは渡来仏の国籍(制作地)をどのように認識していたのか、という疑問である。

 第一の疑問に対しては、惟宗氏や倭寇(海民)の活動範囲との関わりから考察し、第二の疑問に対しては、樫根・法清寺に伝わる諸像から島人の仏像に対する国籍認識の変遷をたどる。そして最後に、2012年、2014年、2019年の三度にわたって発生した仏像盗難事件はなぜ起こったのか、またどのようにすれば防ぐことができるのか、我々研究者が地域で果たすべき役割について考えてみたい。

▶ 討論者:

木村政伸(基幹教育院/人間環境学府 教授)

嶋田暁文(法学研究院 教授)

北澤満 (経済学研究院 准教授)

▶ 司会:

井手誠之輔(人文科学研究院 教授)

国分航士(人文科学研究院 講師)

▶ オンラインによる開催(zoom)

本シンポジウムはオンラインにて開催いたします。参加申し込みはこちらからお願いいたします。

ご登録いただいたメールアドレスに、シンポジウム前日、開催場所のURLをお送りいたします。

お問い合わせ

九州大学人社系協働研究・教育コモンズ

E-mail: enquiry-commons★cmns.kyushu-u.ac.jp

(★を@に変更してください)

実施報告

第6弾企画「国境の島々のダイナミズム」を開催しました。

Dynamism of Border Islands

2020.09.17

 令和2年10月7日(水)、人社系協働研究・教育コモンズの第6弾企画として、シンポジウム「国境の島々のダイナミズム」をオンラインで開催しました。

ivents  当日は、井手誠之輔教授(人文科学研究院)と国分航士講師(人文科学研究院)の司会のもと、高木彰彦本学名誉教授による基調講演「国境の島々のダイナミズム」に加えて、松尾大輝氏(人文科学府博士後期課程)による「境界地域としての中世対馬」、大澤信氏(九州国立博物館研究員)による「仏教文物からみた対馬の境界」の2つの講演が行われました。

 その後、討論者として参加した木村政伸教授(基幹教育院/人間環境学府)、嶋田暁文教授(法学研究院)、北澤満准教授(経済学研究院)が、教育史、行政学、経済史など各専門分野の視点からコメントしました。


ivents   さらに、司会者も交えた討論では、それぞれの国境の「島」の有する地理的条件や歴史・文化の違いによって生じる今日の役割や状況、そして今後の「島」という領域のもつ可能性と課題について、具体的な事例を踏まえながら、考察を行うことができました。

 お忙しいなか、ご講演を賜りました3名の方々、ならびにご協力をいただいた関係者の皆さまに心よりお礼申し上げます。


 As our 6th project of the collaborative platform, we had a symposium “Dynamism of Border Islands” online on October 7th, 2020 (Wednesday).

ivents  Having Professor Ide Seinosuke (Faculty of Humanities) and Mr. Koji Kokubu (Faculty of Humanities) as our host, we had three lectures. We had a keynote lecture, “Dynamism of Border Islands” given by Emeritus Professor Akihiko Takagi, and also two other lectures, “Tsushima at Boundary Area in the Medieval Period” by Mr. Daiki Matsuo (Graduate School of Humanities doctoral course) and “The Boundary of Tsushima seen from Buddhist Artifacts” by Mr. Shin Osawa (Kyushu National Museum).

 Afterwards, we had Professor Masanobu Kimura (Faculty of Arts and Science/ Graduate School of Human-Environment Studies), Professor Akifumi Shimada (Faculty of Law), and Associate Professor Mitsuru Kitazawa (Faculty of Economics) join and had a debate between specialties such as the history of education, administration, and economics.


ivents  We also had a deeper debate joined with our hosts about the role and situation of an island situated near a national border, regarding geographical condition and historical or cultural differences, and also possible issues that an island will have as a territory in the future, considering specific examples.

 We would like to deeply thank the three speakers and everyone who attended this lecture, despite their busy schedules.