2023.01.10
2022.09 中央経済社
本書は、近年我が国の科学技術イノベーション政策において取り組まれてきた「イノベーション・エコシステム」の形成を指向する施策を評価するための視点、方法等を確立することを目的として、九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター(CSTIPS)と文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課が実施した共同研究の成果を取りまとめたものです。
研究の目的は政策的なイシューに基づくものですが、これを達成するために本書では、そもそも「イノベーション・エコシステム」とは何か、それはどのような要件によって成り立っているのか、イノベーション・エコシステムにはどのようなタイプが存在するのか、我が国には既にイノベーション・エコシステムが成立しているのかといった学術的な疑問に答えています。
本書の背景にある現状認識は、モノとモノ、モノとサービスなどの結合が進展した現代の社会経済環境の下では、企業は単独ではイノベーションを実現することができず産業横断的なコミュニティの一員としてのみイノベーション・プロセスに関与することができる状況になったというものです。そのようなコミュニティが棲息できるイノベーション・エコシステムを形成するための政策課題を明らかにすることが研究の眼目でした。しかし、本書の最大の貢献は、シリコンバレーのミステリーとされてきた無二の地域的な優位性が、エコシステムとしての多様性の内部化にあることを解明した点にあると思っています。
(経済学研究院 永田晃也)
第1章 序論
第2章 イノベーション・プロセスをシステムとして捉える視座の変遷
第3章 イノベーション・エコシステムの概念
第4章 イノベーション・エコシステムの実在:シリコンバレー再訪
第5章 日本におけるイノベーション・エコシステムの萌芽
第6章 イノベーション・エコシステムの類型と構成要件
第7章 イノベーション・エコシステム構築への挑戦
第8章 イノベーション・エコシステムの構築をめぐる事業評価に向けて
付記 共創の場の形成に向けて
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● 研究者情報
九州大学 経済学研究院 永田 晃也(ナガタ アキヤ)
E-mail: a-nagata☆econ.kyushu-u.ac.jp
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