2022.11.17
2022.08 九州大学出版会
日韓両国は、少子高齢化に伴う生産年齢人口比率の低下などにより労働力不足に直面し、外国人労働者の受入れが増加している。受入れ拡大のための制度改革が進められてきたが、外国人労働者の増加に伴い処遇改善などが課題となっている。特に、他産業に比べて高齢化と労働力不足が顕著な農業では、外国人労働者への依存と受入れ継続への切迫感が強い。
本書は日韓共通の課題である外国人労働者の受入れに関し、主に政治経済学の視点から考察するものである。第Ⅰ部では、受入れ制度改革の現状と問題点について、それぞれの専門家の視点から論じた。第Ⅱ部は、農業分野に焦点を絞り、外国人労働者への依存の現状と課題を検討している。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、外国人労働者に依存する経営は困難に直面した。コロナ後を見据え、在留期間長期化などの見直しが進められるなか、外国人労働者と協働する社会の構築に向けて、課題と克服の過程を隣国の経験から学ぶ好機にある。
少子高齢化による人口減少が進む日本では、外国人労働者が不可欠な存在になっています。実際に、この10年で外国人労働者は凡そ2.5倍に増加しました。特に、日本人の集まらない農業分野では、雇用労働者に占める外国人の比率が高まっています。
本書は、外国人労働者の受入れ改革で先行する韓国と比較することで、日本の現状と課題を考察しています。
2022年7月に古川法相(当時)は、「国際貢献という技能実習生の目的と、人手不足を補う労働力として扱っているという実態がかい離している」と述べ、制度の見直しが進められています。外国人との共生社会の実現に向けた議論に貢献できれば幸いです。
(経済学研究院 水野敦子)
総論 日韓における外国人労働者受入れの現状と課題
第1章 日韓の外国人労働者受入れの経過と現状
第2章 韓国における雇用許可制の実態と日本への示唆
第3章 特定技能制度と雇用許可制の比較
第4章 韓国の移住民と社会統合
第5章 非熟練外国人労働者の受入れと韓国語教育
第6章 韓国の農業における外国人労働者の雇用に関する考察
第7章 韓国農業における労働力需要の季節的繁閑への対応
第8章 日本農業及び食品加工業における外国人労働者の現状
第9章 日本の農業分野における外国人労働者の受入れ
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● 研究者情報
九州大学 経済学研究院 水野 敦子(ミズノ アツコ)
E-mail: amizuno☆econ.kyushu-u.ac.jp
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