2022.12.03
2016.05 法律文化社
第一次世界大戦直後のドイツで結成され、ヴァイマル共和国初期(1918-1923)に活動を展開した志願兵部隊「義勇軍(Freikorps)」。本書は、この義勇軍での経験(特に暴力経験)が、その後の当事者や社会にいかなる影響を及ぼしたのかを分析するものである。従来の研究において、義勇軍は往々にして「ナチズムの前衛」と評価されてきた。これに対し本研究では、義勇軍経験をより幅広い政治的文脈のなかで捉え直すことを試みている。具体的には、ナチ、共和派、コミュニストといったように、同じ義勇軍出身者でありながらも、別々の政治的道程を歩むにいたった複数の人物のバイオグラフィを比較検討し、そこにおいて義勇軍経験がもつ意味を考察している。
第一次世界大戦後のドイツ・ヴァイマル共和国は、戦後日本の言論空間において、しばしば自国の写し鏡として論じられてきました。これはヴァイマル民主主義を「戦後民主主義」の前例として捉え、教訓化しようという問題意識の産物といえます。しかし、安易な比較は危険です。ヴァイマル共和国は大戦終結とともに産声を上げましたが、そこでは内戦状況が続き、また東部での対ポーランド国境闘争やバルト地域での(反共)干渉戦争も同時に展開されました。本書は、このような「未完の戦争」という問題に直面した国のひとつとしてヴァイマルを捉え、さらにはそこで暴力を行使した人びとに注目することで、彼らの経験がもつ歴史的意味を問うものです。
(人文科学研究院 今井宏昌)
序章 「政治の野蛮化」?
1 問題の所在 2 研究史 3 方法と史料
第1章 ドイツ革命期における義勇軍運動の形成と展開
1 義勇軍の結成とその背景 2 ドイツ国内における義勇軍運動 3 ドイツ東方における義勇軍運動 4 義勇軍の社会的構成
第2章 裏切りの共和国
1 カトリック青年から前線兵士へ 2 前線兵士から前線将校へ 3 義勇軍戦士への道 4 バルト地域における暴力・不信・憎悪 5 反共和国の旗の下に 6 暴力のエスカレート 7 「ナチ党ベルリン支部」の結成
第3章 共和国の防衛
1 社会主義青年から青年将校へ 2 ドイツ社会民主党員の義勇軍運動 3 ポンメルンにおけるカップ一揆との対峙 4 「ドイツの救済」から「共和国の防衛」へ
第4章 コミュニストとの共闘
1 青年将校から義勇軍戦士へ 2 コミュニストとの闘争からコミュニストとの共闘へ 3 「国の一体性」とナショナル・ボルシェヴィズム
第5章 ルール闘争期における義勇軍経験の交差
1 ふたつのルール闘争 2 アルベルト・レオ・シュラーゲターの死 3 シュラーゲター崇拝と共和国の危機 4 ドイツ共産党の「シュラーゲター路線」
終章 義勇軍経験と戦士たちの政治化
1 義勇軍経験をめぐる連続性 2 義勇軍戦士たちの政治化 3 義勇軍経験の行方
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九州大学 人文科学研究院 今井 宏昌(イマイ ヒロマサ)
E-mail: imai☆lit.kyushu-u.ac.jp
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