2022.12.02
2018.02 清文堂出版
近代都市としての佐世保は、他の軍港都市と異なり、長崎県北部や離島に対する中心都市としての位置づけがあり、物資供給の要となる問屋機能も含めて発展したという特徴がある。敗戦後の佐世保は、中国からの復員船が到着する港でもあり、その復興が大きな課題となった。平和港湾産業都市構想が、朝鮮戦争や海上特別警備隊の設置などの社会情勢に押されて、しだいに軍港論に変化していく様子をも解き明かす。
本書は、軍港都市をめぐるさまざまな問題を、地域社会の視点から学際的に研究したシリーズの1冊です。佐世保編では、経済史研究者が中心となっていますが、地理学や政治史・軍事史からのアプローチも含まれており、また時期的にも明治から高度成長期まで幅広くカバーしています。
一執筆者として印象に残ったのは、佐世保に関する資料の少なさです。戦前期については地方紙すらほとんど残存しておらず、研究の組み立てに難儀しました。佐世保が軍港都市であったからこそ、こうした部分にも戦争の影響が色濃くあらわれているのでしょう。
本書には、研究論文のみでなく、各執筆者によるコラム(私は、佐世保の菓子について書きました)も掲載されており、また表紙も含めて多くの写真・地図などの図像が用いられていることも特徴です。ぜひ、気軽に手に取ってみてください。
(経済学研究院 北澤満)
序章 産業構造からみる軍港都市佐世保
第1章 佐世保の「商港」機能
第2章 海軍練習兵たちの日常
第3章 軍港都市佐世保におけるエネルギー需給
第4章 せめぎあう「戦後復興」言説
第5章 旧軍港市の都市公園整備と旧軍用地の転用
第6章 一九六八:エンタープライズ事件の再定置
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● 研究者情報
九州大学 経済学研究院 北澤 満(キタザワ ミツル)
E-mail: kitazawa☆econ.kyushu-u.ac.jp
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