人社系副専攻プログラムとは?

「横断型」と「専門領域型」からなる魅力的プログラム

 戦後の日本や世界の政治や経済を支えてきた枠組みが次々と崩れ不安定化し、文化的・宗教的混乱と知的動揺が世界全体に広がりつつあります。こうした不透明な現代社会において、私たちは一体全体、何を学び、それを個人や社会の未来にどう活かしていけばよいのでしょうか。
 こうした根源的な問いかけに対して、人文学・社会科学が果たすべき役割はますます大きくなっています。とはいえ現代社会の新しい潮流は、これまでと同じ学問的な枠組みや学び方では正しく把握できないかもしれません。そこで九州大学の文系4学部(文学部・教育学部・法学部・経済学部)は、2018年4月からそれぞれの学問分野に蓄積された知的資産を相互に開放し、体系的に提供する「文系4学部副専攻プログラム」をスタートさせました。今回、2023年4月からは新たに工学部建築学科を加え、人社系副専攻プログラムとして新たにスタートします。
 副専攻プログラムにより、九州大学の文系4学部と工学部建築学科の学生は、自学部で学ぶ深い専門性に加え、学部の枠を超えた人文・社会科学分野の知的広がりを獲得することができます。
 共に学び、大きくしなやかな翼で世界に羽ばたきましょう!
 プログラムは、各学部の専門教育が始まる2年次からスタートします。「横断型」と「専門領域型」に分かれ、それぞれの型で複数の魅力的なプログラムが提供されます。

1. 横断型プログラム

大学入学後に、自学部の専門教育を学ぶ中で、さらに「歴史」「アジア」「情報」「ビジネス」「地域文化遺産」といった現代社会を解く重要なテーマに関心を持った知的好奇心旺盛な学生に対して、自学部に籍を置いたまま2年次より上述のテーマに関して文系4学部と工学部建築学科が提供する科目を広く体系的に学ぶ機会を提供します。

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副専攻プログラム名主要科目例*
現代のための歴史現代史入門、史学概論,イスラム史学、教育史、政治史、経済史、日本建築史概論等
クロス・アジアの人間と社会Education and PoliticsⅠ・Ⅱ、アジア宗教思想、中国法、グローバル化とアジア経済等
超情報化社会の文系知情報法、法情報学、情報サービス論、教育とコミュニケーションデザイン、情報経済等
グローバル時代のビジネス現代日本経済論、国際ビジネス、国際取引法、比較教育学、比較宗教学等
建築から学ぶ地域文化遺産建造物文化財学A・B、日本建築史概論、人文学基礎Ⅰ・Ⅱ、教育文化史、行政学、日本経済史等

四つの横断型プログラムが目指すもの


現代のための歴史


現代の日本社会・国際社会を理解し、そのなかで活躍するために、それぞれの地域・社会や産業分野・学問分野を過去から現在にいたる蓄積によって形成されるものとして歴史的に理解する力を、そうした視点を獲得するための方法論も含めて身につけます。


クロス・アジアの人間と社会


アジアという時空間や概念を軸とする「クロス・アジアの視座」から人間や社会を理解するために、隣国を含むアジア諸国との関係、さらにそのグローバルな文脈における位置や今後の在り方、そのなかでの人々の生き方への深い洞察力を身につけます。


超情報化社会の文系知


情報通信ネットワーク技術が日進月歩の勢いで高度化する現代社会において、それらの技術革新が様々 な産業分野に及ぼす影響や、そこにおける規制のあり方を含めて、近い将来における社会のあるべき姿を今から考え、適切な社会制度を設計できるような能力を身につけます。


グローバル時代のビジネス


グローバル化が進む現代社会では、各国・地域のローカルで多様な文化や政治・経済・社会の内在的理解は欠かせません。地球上のどの地に身を置くことになっても、地域理解とビジネスに関する実践知をもって互恵的関係を構築できる「真のグローバル・ビジネス人材」としての力を身つけます。


建築から学ぶ地域文化遺産


地域文化遺産を通じて「建築」とは何か、また歴史的建造物を保存・活用していく手段を学び、国内外を問わず社会で活躍するための基盤的素養を歴史的建造物を通じて身につけます。

各コースが定める科目により16単位を取得し、プログラムを修了すると…

就    職

自学部が提供する専門分野を深く学んだうえで、「歴史」「アジア」「情報」「ビジネス」などの現代的テーマに関する(方法論も含めた)知的広がりを携えて社会に出ることができます。

大学院に進学

「歴史」「アジア」「情報」「ビジネス」などの現代的テーマに関する広範な知的広がりをバックに、専門の研究を進めることができます。

将来のキャリアパスに沿って多様なプログラムの中から選択が可能

2. 専門領域型プログラム

大学入学後、自学部の専門領域を学ぶに連れて、さらに他の学部の専門領域にその知的好奇心が広がることはよくあるケースです。本プログラムは文系他学部の専門領域をより深く学びたいと考える学生に対して、自学部に籍を置いたまま2年次より他学部の専門領域を体系的に学ぶ機会を提供します。

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提供学部副専攻プログラム名
文学部哲学プログラム 歴史学プログラム 文学プログラム 人間科学プログラム
教育学部教育学・心理学から見た『個と多様性』 教育学・心理学から見た『文化とシステム』
法学部法の文化と歴史 行政と法 企業と法 犯罪と法 国際ビジネスと法 政治
経済学部経済学・経営学のツールで解く現代社会の諸課題
工学部建築学科教養としての都市・建築学

※人社系副専攻プログラム特別入試(大学院クロス入試)

人社系副専攻プログラムにおいて、他の学部が提供する科目や演習(ゼミ)で学ぶ中で、当該学問分野をさらに大学院で深く学びたいと考える履修生向けに「副専攻プログラム特別入試」(いわゆる大学院クロス入試)が実施されています。
この特別入試は、自らが所属する学部において深い専門性を身につけたうえで、人文・社会科学系の別分野の大学院においてさらに専門性を追求し、「総合知」の獲得を目指す学生向けに、特別にアレンジされた入試です。
出願資格や選抜方法について、詳しくは各学府のホームページで確認してください。

2023(令和5)年度大学院修士課程入学試験で「文系4学部副専攻プログラム特別入試」実施予定の大学院

同窓会からのメッセージ

杉 哲男 氏 

九州大学東京同窓会
理事・事務局長

人社系副専攻プログラムに期待します!

2015年6月、国立大学「文系学部廃止」の文脈の報道がメディアを駆け抜けた。一斉に批判の声が挙がったのは当然であるが、同時に「文系学部の在り方」を再考するチャンスでもあった。
九大では、関係者の努力により、人文学・社会科学が果たすべき役割の大切さを再確認し、新しい「副専攻プログラム」を構築するに至った。
そもそも、九大の「文系4学部」は『法文学部』としてひとつの学部であった。その歴史的事実をヒントに横断的・専門的、かつ時宜を得た「四つのプログラム」の発足を試みる。それは「歴史」「アジア」「情報」「ビジネス」といった現代的テーマを捉えたものであり、実学への期待が膨らむ。
私は多くの同窓生と出会った中で、大切に思うことは、「豊かな人間性と幅広い知性」である。九大文系同窓生の大切なアイデンティティづくりに「副専攻プログラム」が大きく寄与してくれることを期待したい。